眼の病気について
増殖性硝子体網膜症
病気の原因
網膜(眼底)と眼の中のレンズとの間にある「硝子体」と言う生卵の白身に似た組織が、(広い意味での)眼の老化現象により、「液化」し、眼球の中で動き網膜を牽引して網膜の一部に“さけめ”「裂孔」ができたり、網膜の一部分が萎縮して「円孔」という小さな“穴”ができると、その裂孔や円孔を通って水が網膜の下に入り、網膜が剥離します。
網膜剥離の状態が長く続いたり、網膜剥離の手術を行っても裂孔や円孔が完全になおしきれなかったりすると、網膜に円孔、裂孔が開いている事により、正常ならば決して混ざり合うことのない硝子体側の成分と網膜の外側にある成分とが円孔、裂孔を通して自由に交通します。そのために、本来は卵の白身のような状態の硝子体に線維性の成分が増殖して網膜に癒着し、網膜を牽引して増殖性硝子体網膜症と呼ばれる特殊な網膜剥離になります。
手術の必要性・放置した場合の可能性
一度剥離した網膜は、手術により強制的に元の位置に戻さないと、網膜は元の位置には戻りません。
さらに、増殖性硝子体網膜症では、放置すると硝子体の線維性の成分の増殖が進行して、重症度が進んだ増殖性硝子体網膜症となり手術の成功率が低下します。
放置すると、失明して、場合によっては眼球が小さくなります(眼球癆)。
手術手技
硝子体手術を行います。
- (1) 硝子体を取り除きます。
- (2) 網膜に癒着している線維性の増殖膜を除去します。
- (3) 網膜の下に溜まっている液を排除します。(眼内から)
- (4) 網膜の円孔、裂孔を凝固します。(冷凍凝固、レーザー凝固)
- (5) 将来残った硝子体が収縮して、ふたたび網膜を牽引する可能性が高い場合、網膜が牽引されても、あまり影響が出ないように、眼球壁に幅2mmのシリコンバンドで“はちまき”をします(円周バックリング)。
- (6) 網膜を眼内から眼球壁に強制的に押しつけ、更に、眼内の水が網膜の円孔、裂孔を通るのを予防する目的で手術終了時に眼内に空気などを入れて手術を終了します。その際には手術後、網膜の円孔、裂孔の位置に応じて特殊な頭の位置を取って頂く必要があります。
- (7) 必要があれば、さらに、目の中にシリコンの油を入れて手術を終了する場合もあります。